● 安楽死・尊厳死

  (1)安楽死は2つに分類される?

  (2)安楽死否定論の理由は?

  (3)安楽死肯定論の理由は?

  (4)安楽死の歪められた歴史とは?

  (5)ナチスの国家的安楽死、遺伝学的安楽死とは?

  (6)尊厳死とは?

  (7)日本でいう「尊厳死」の意味

  (8)欧米での安楽死論議

  (9)オレゴン州の「尊厳死法」

  (10) オランダの安楽死法

  (11)オランダの安楽死の対象

  (12)オーストラリア北部準州の「安楽死法」

用語一覧へ戻る 『私が選ぶ、私の死』角川文庫参照


(1)安楽死は2つに分類される?

 安楽死は大別すると2つに分類されます。

 1.消極的安楽死

  無意味な延命治療をしないで自然な死を迎えるように支援する。無意味な医療の中止、自然死。間接的安楽死、苦痛除去のためにした医療行為が結果として命を縮めた場合。

 2.積極的安楽死

  本人の自発的意志を前提として一定の条件を満たした場合、医師が自殺幇助の行為を行うこと。消極的安楽死は「治療行為の中止としてその許容性を考えれば、足りる」(東海大事件判決文)ものであり特に安楽死という言葉を使う必要はないという意見があるが、わかりやすい言葉なのでこれからも使われるであろう。自然死、または尊厳死と同義語または間接的安楽死を含める言葉として使われる。

 

 


(2)安楽死否定論の根拠

 安楽死には自殺幇助の意味が含まれているとして、安楽死すべてを否定する考えがあります。消極的安楽死は通常の医療行為の範囲内で考えられることで、安楽死という用語を使う必要はなく、積極的に医師が自殺幇助の行為をすることはいかなる条件があっても反対するというものです。

 

 

 


(3)安楽死肯定論の根拠

 安楽死はギリシャ時代から使われた言葉で「オイタナジー」が語源でオイは良い、タナトスは死という意味です。決して、安らかな楽な 死を否定するものではありません。近代、言葉自体が歪められて伝えられた歴史があるので、否定的な見方をする人が多いようですが、本人の意思を前提にして考えれば、ケースによっては積極的に自殺の意志を支援することが検討されても良いという意見です。

 

 

 


(4)安楽死の歪められた歴史とは?

 産業社会では効率が社会の価値の基本とされ、無用の者、役に立たぬ者に社会が手をかける必要がないという考えが広まりました。当時の風潮は、アレキシス・カレル(ノーベル医学賞受賞)の著作「人間この未知なるもの」(当時、ヒューマニズムの手本と呼ばれていたそうである)に書かれています。曰く「不幸な者、利己主義者、愚鈍な者、役に立たぬ者の寿命をなぜ延ばすのか」。信じられない話だが事実です。また、この思想がナチスドイツのアウシュビッツにつながっていくのです。

 

 

 


(5)ナチスの国家的安楽死、遺伝学的安楽死?

 ヒットラーは、1939年9月1日宣戦布告の日にユダヤ人を遺伝学的に無価値・有害と決めつけ、政令<慈悲による死>に署名し制定、約数十万のユダヤ人をガス室で虐殺しました。アウシュビッツの大義名分に使われた言葉が<慈悲による死>=「安楽死」なのです。安楽死という言葉はナチスドイツによって、本来の意味を歪められました。戦後のニュルンベルグ国際軍事法廷で、戦犯はあくまでユダヤ人の自殺を主張したが、虐殺事件として処罰判決が出されました。

  

 

 


(6)尊厳死とは?

 本来は、ある種の生き方を否定し尊厳ある死を選んでの自殺も含めて尊厳死という言葉は使われてきました。特攻隊に志願しての死や、自分を犠牲にして他人の命を助けた死、子供たちとともにガス室にはいったコルチャック先生の死。これらは尊厳死と呼べないでしょうか。

  

 

 


(7)日本でいう「尊厳死」の意味

 日本では日本尊厳死協会が消極的安楽死を「尊厳死」と言い、尊厳死の宣言書を普及している関係もあって、尊厳死と言えば消極的安楽死という意味でマスコミも使っています。

しかし、アメリカでは消極的安楽死は「自然死」といい、各州に「安楽死法」ができて認めています。アメリカでは「尊厳死」という言葉は「積極的安楽死」または「医師による自殺幇助」という意味内容で使っています。

  

  

 

 


(8)欧米での安楽死論議

安楽死は違憲か(アメリカの場合)

 オレゴン州尊厳死法は違憲と判決されたが、ワシントン州では自殺幇助禁止法は違憲という訴えに関して連邦控訴裁判所は1996年3月、自殺幇助禁止法は憲法違反ではないとの判決をくだしました。ニューヨーク州の自殺幇助禁止法は憲法違反ではないかという訴えには、1996年4月憲法違反であるという判決がくだりました。いずれも最高裁に上訴されているが、その決定はなされていません。

 

アメリカの安楽死法制化運動

 ワシントン州での住民投票   1991年11月 賛成46%

 カリフォルニア州での住民投票 1992年11月 賛成47%

 オレゴン州での住民投票    1994年11月 賛成52%

 賛成が多数の場合、制定が予定されていた法律は「00州尊厳死法」でしたが反対派が憲法違反の疑いがあると訴えて連邦控訴裁判所で「違憲」と判決され法制化は葬られました。ワシントン州とカリフォルニア州は積極的安楽死でオレゴン州は自殺幇助と内容が異なっています。

 

 


(9)オレゴン州の「尊厳死法」

 1994年住民投票で賛成52%で「オレゴン州尊厳死」は成立した。が反対派が違憲の疑いがあると訴え、法制可手続きを裁判所が差し止めた。
 1997年再度住民投票が行われ、60%の賛成で正式に制定されました。その間に控訴裁でも最高裁でも、「差し止め命令」の撤回を指示していた。
 内容は本人の自発的意思表示を前提に、一定の条件を満たした場合、医師は
@口頭の要請があってから15日、書面で要請してから48時間後に処方箋を出す。
Aその間誰も患者に暗示、説得、教唆、強制あるいは影響を与えてはならない。
B服用するかどうかは患者が決める。
C患者が服用する場合は医師や家族がその場にいることは許されている。

 

 


10. オランダの安楽死法

 安楽死先進国と言われるオランダでは年間2〜3000の安楽死が行われている。法的には埋葬法で、一定の条件を満たしていると医師が届け出れば書類送検はされるが起訴されないということであった。
 それでは容疑者に医師はなるので法的に安楽死を認める合法化の法案が1999年7月議会に提案され、2000年暮れ下院を通過、2001年4月10日上院でも可決した。2001年秋にも発効の予定。

  

 


11.オランダの安楽死法の対象

 @本人の自発的で真摯な継続した意思。
 A耐え難い苦痛(神経的苦痛を含む)
 B治癒の見込みがない
 C医師が第三者の医師と相談
 D医師が事後届け出る

という条件を満たす場合、医師は刑法上免責される。
なお、同法は12歳以上の未成年にも安楽死権を与えた上、患者が判断力のある間に残した事前の安楽死希望に法的効力を認めている(アルツハイマー)点で世界に類がない。

  

 


12.オーストラリア北部準州の「安楽死法」

 世界で最初の積極的安楽死を認めた「終末期患者の権利法」が1995年に制定され、96年7月に施行され、4件の安楽死が報ぜられたが、97年3月にその公安を無効。

オーストラリア準州(北部特別地域)で安楽死を容認する法律が世界ではじめて施行された。 

 

 

 


※一部「私の生命は誰のもの」星野一正著から引用しています。

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